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CASE STUDY Vol. 3

診療所と介護施設をつなぎ業務効率化とケアの質向上に貢献する
「バイタルリンク」

内田医院(徳島県東みよし町)
特別養護老人ホーム みのだ苑(徳島県三好市)

徳島県の「内田医院」と、同院と連携する特別養護老人ホーム「みのだ苑」は業務効率化とケアの質向上を目的に、帝人ファーマが販売する多職種連携情報共有システム「バイタルリンク」を導入した。導入によって医師と介護施設スタッフのコミュニケーションがどのように改善し、ケアの質向上にどのような効果があったのか。内田医院院長の内田知行氏と、みのだ苑の看護師に話を聞いた。

医療と介護のハードルを低くするICT

 徳島県最西部に位置する三好市および東みよし町は県内各地域の中でも少子高齢化が進行し、医療従事者、介護従事者の人材確保が難しくなりつつある。そのため、医療機関、介護事業所、行政などに所属する多職種が連携を深めることで、より効率的な医療・介護提供体制を構築することが急がれている。

内田医院 院長
内田 知行氏

 内田知行氏は内田医院の院長として、地域のかかりつけ医としての役割を果たすとともに、三好市医師会の会長として医療、介護、行政の連携強化に努めている。同医師会の副会長時代にICT担当だったこともあり、医療と介護の間にある垣根を取り払い、連携を深めるにはICTの活用が有効であると考え、多職種連携情報共有システム「バイタルリンク」の導入に至った。

 内田氏は特別養護老人ホーム「みのだ苑」に週2回赴き、60人の入所者に対する診療を行っている。情報共有の手段として、内田医院とみのだ苑は2016年9月にバイタルリンクの運用を開始。内田氏はパソコンとタブレット端末、みのだ苑の看護師4人はタブレット端末を用いて情報を共有している。バイタルリンクへの登録者は、みのだ苑の入所者60人全てではなく、医療依存度が高く、情報共有の頻度が高い入所者に限定して運用し、17年1月では19人を登録している。

 「医療・介護連携において、介護側から医療側へのアプローチはハードルが高いと言われて問題意識がありました。ICTを使うと電話と違って相手の時間や都合を気にせずに連絡ができるので、結果的にそのハードルが低くなると考えています」と内田氏は話す。

 そこで帝人ファーマが提供する「バイタルリンク」を導入し、内田氏とみのだ苑の看護師がコミュニケーションを取りながらチームによる患者ケアを実践している。同システムはクラウドサービスであり、スマートフォンやタブレット端末あるいはパソコンで患者の情報をいつでもどこでも入力・閲覧・共有できるシステムだ。

タブレット端末で簡単に患者の状態を入力。スタッフと素早く確実に情報を共有し、やり取りすることができる。
特別養護老人ホーム みのだ苑の看護師
特別養護老人ホーム みのだ苑の看護師。鈴木みどり氏(左)、藤川光子氏(中央)、安宅美紀氏(右)。

 みのだ苑の看護師リーダーの鈴木みどり氏は次のように言う。「バイタルリンク導入による最大のメリットは、内田先生に気軽に報告・相談ができ、指示をいただけることです。特に、内田先生が不在の際にも連絡がつきやすく助かっています。先生からも、みのだ苑に訪問される前に連絡が入ることもあります。例えば『鼻腔栄養のチューブを入れます』という指示をいただくことがあり、事前にそのための準備ができるので業務の効率が上がりました。また必要に応じて看護師からケアマネジャーなどの多職種にも先生からの指示を伝え連携を取っています」。

 内田氏と鈴木氏をはじめとした看護師は、他のスタッフに伝えたいメッセージを入力することで、患者の状態や行ったケア情報をリアルタイムに共有できる「連絡帳機能」を活用してコミュニケーションを取っている。この機能は関係者だけのクローズドな環境下でやり取りすることができ、患部などの写真や各種報告書の資料などの電子ファイルも添付することができる。

診察・ケアに役立つ情報を素早く共有・グラフ化

 バイタルリンクには「連絡帳機能」に加え、患者情報共有のための様々な機能が備わっている。「バイタルデータ管理機能」は、体温、血圧、脈拍などの測定データを多職種で共有でき、自動でグラフ化する機能。そのため、患者の日々測定したバイタルデータや経時的な状態変化を確認することができる。「バイタルリンクは体温、血圧、酸素飽和度など必要な項目がコンパクトにまとまっていて、患者さんの状態を素早く入力できグラフ化できるので、即時性もありながら経時的にも把握することができます。1日に1~2回看護師の入力したデータや連絡帳に記載されたメッセージなどを確認しています。グラフ化されたデータを基に、患者さんの状態に対して共通認識を持ちながら看護師とコミュニケーションを取ることができるので、適切な指示が出せます。患者さんのバイタルデータの即時的・経時的な共有により、ケアの質が向上したと実感しています」(内田氏)

 また、数値化しにくい患者の状態を観察し、アイコンを選択するだけで、簡単に5段階の評価を入力できる「日常生活、療養状況評価機能」を「ニコちゃんマーク」と愛称で呼んで活用。スタッフ全員が患者の状態を共有することに役立っている。項目は自由に設定できるが、みのだ苑では主に①褥瘡、②尿量、③浮腫について入力しており、患者によっては①嚥下、②むせ、③息切れの状態も入力している。

「日常生活、療養状況評価機能」では睡眠状況、服薬、呼吸困難感など任意に決めた項目について、1(Bad)から5(Good)まで患者状態を表すアイコンを選択するだけで簡単に5段階の評価を入力することができる。また、状態の変化をグラフで確認することも可能。

 鈴木氏は次のように言う。「血圧などの数値データだけでなく、アイコンによる観察評価を行いグラフ化することでスタッフ全員が直感的に共通の認識を持ち、例えば尿量が減少していれば、水分摂取量が適切でない可能性があるとして、対応することができます。また、口頭や電話での指示は記録に残りませんが、バイタルリンクによる指示はデータで残るので、後々確認ができるとともに関係者全員で共有できるので安心です」。

地域医療・介護連携推進に向けて

内田氏は導入の容易さやメンテナンスなどの手間がかからないこと、またユーザーの声を反映したバージョンアップが定期的に行われてユーザービリティが向上していることも、バイタルリンクが地域で受け入れられるポイントだと指摘する。

特別養護老人ホーム みのだ苑は三好市と東みよし町の境に位置し、1967年に開設された。定員は60人で平均年齢は84.9歳(2017年1月18日現在)。

 「サーバーなど大がかりな設備を導入する必要はありませんし、メンテナンスの手間もありません。サポート面に関しては、帝人ファーマは取り扱い講習会の開催をはじめ、現場の声を取り入れた定期的なバージョンアップを実施してくれるので助かっています。先日は西暦に加えて和暦で年月日入力ができるようになるなど細かい対応が行われました。地域医療・介護連携を促進するためには、ICTツールの使いやすさはとても重要なポイントだと考えています」。

 バイタルリンクは昨年、徳島県医師会の「ICT地域医療・介護連携推進支援事業」に採用された。内田氏は、現在は医師と介護施設の看護師で活用しているが、近いうちに施設内のケアマネジャーなどの介護職もメンバーに加える予定だ。将来的には診療所と介護施設だけでなく地域包括支援センター、病院、自治体などへも情報共有の輪を広げ、地域の医療・介護全体を支援するツールとしてバイタルリンクを活用できればと考えている。

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