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CASE STUDY Vol. 7

兵庫県の医師会ごとの様々な
多職種間連携のニーズをささえる「バイタルリンク」

兵庫県医師会
加古川医師会
西宮市医師会

2017年、兵庫県医師会は、帝人ファーマが販売する医療・介護多職種連携情報共有システム「バイタルリンク」を採用し、兵庫県各地区の医師会に推奨、展開が進んでいる。導入の経緯やねらい、将来展望を兵庫県医師会副会長で加古川医師会副会長でもある足立光平氏に聞くとともに、加古川医師会、西宮市医師会のバイタルリンクを用いた「地域医療連携」の取り組みを聞いた。

県と県医師会が連携し、バイタルリンクの利用を推進

 国は地域における医療および介護を総合的に確保する施策の一つとして「地域医療介護総合確保基金」事業を展開している。兵庫県は兵庫県医師会と連携し、この事業の取り組みとして、兵庫県在宅医療地域ネットワーク整備事業を推進。2017年に兵庫県医師会が多職種連携のICT基盤として帝人ファーマの販売する医療・介護多職種連携情報共有システム「バイタルリンク」を採用。県下の郡市区医師会で採用が進んでいる。

兵庫県医師会 副会長
加古川医師会 副会長
足立 光平氏

 バイタルリンクは患者のバイタルデータや服薬状況、訪問時の様子など様々な情報を多職種間で効率的に共有できるクラウドシステムだ。
 兵庫県医師会副会長で医療情報分野を長年担当し、加古川医師会副会長でもある足立光平氏は、保健医療福祉分野の公開鍵基盤(HPKI※1)による医師資格証をアクセス要件とする医師同士のセキュリティの高い地域医療情報ネットワークと多職種連携のネットワークの二階建て構造のシステム基盤づくりを進めている。「一階部分の幅広い裾野が求められる多職種が行う在宅医療領域については、HPKIは必須にできないとは言え、関係ガイドラインをクリアする水準を確保しつつ、より柔軟に多職種の方が利用できる分かりやすいツールが望まれました。また、機能面でも、SNS(交流サイト)機能だけでなく、多職種が取得したバイタル情報の共有など在宅医療をささえる機能は不可欠でした。総合的な視点で、長く在宅医療事業を展開している帝人ファーマのバイタルリンクを採用しました」と語る。
 2018年12月現在、県下の約2/3の郡市区医師会、約800の施設がバイタルリンクを用いて多職種連携を図っている。

※1. Healthcare Public Key Infrastructure

アドバンス・ケア・プランニング(ACP※2)への展開~加古川医師会~

 現在、加古川医師会で注力しているのがバイタルリンクのACPへの応用だ。任意のファイルを患者情報欄に保存できる機能を用い、患者の意向をまとめたACPシートを保存。多職種の方が必要な際にすぐにこのACPシートを確認し、患者さん本人の要望に沿った看取りを含む対応ができるように運用を進めている。
 加古川地区(加古川市・稲美町・播磨町)では、在宅医療地域ネットワーク事業として、バイタルリンクをはじめ、在宅医療に対応している医療機関や介護サービスの問い合わせ・相談に応じる「在宅医療機能マップ・相談システム」を導入。さらに30年の歴史ある「加古川地域保健医療情報システム」も併用した端末を病院の地域医療連携室にも導入し、医師、多職種の方が積極的にこれら仕組みを活用し地区の地域包括ケア・ACPの推進に取り組んでいる。【図1】

※2. ACP(Advance Care Planning):治療や介護の内容を含むケア全体について、患者本人および家族と、医療、介護、福祉関係者の間で、将来患者本人の意思決定能力が低下する場合に備えて、対応のしかたをあらかじめ話し合い、決めておくこと。

【図1】加古川医師会の地域包括ケアとACPを推進するシステム構成

看取り当番医制度「在宅看取りネットワーク」への展開~西宮市医師会~

 西宮市では、西宮市医師会会長の大江与喜子氏がACPにおいて「看取り方」は重要なテーマであるととらえ、看取り当番医制度「在宅看取りネットワーク」の構築を進めている。これは、バイタルリンクに看取りに必要な同意書などの書類情報を保存しておくことで、在宅看取り当番医が当番時に情報を確認・共有・活用することで患者本人の希望に沿った在宅看取りを実現する仕組みだ。
 手順としては、事前に看取りが近く当番医制度を利用されることを同意された患者さんの看取り時に、患者宅を訪問した訪問看護師が専用電話にコールすると、電話転送システムを介して当番医に連絡が入る。当番医はバイタルリンクから患者情報を確認、患者宅に赴き、看取りを行う。【図2】

【図2】西宮市医師会 在宅看取りネットワークのシステム構成
  • 西宮市医師会 会長
    大江 与喜子 氏
  • 西宮市医師会 副会長
    伊賀 俊行 氏
  • 西宮市医師会 理事
    福井 威志 氏

 西宮市医師会理事の福井威志氏は「今後さらに増える在宅看取りを主治医だけで行うのは限界があります。本人が望まない救命処置を避けるためにも医師会による体制づくりは早期に必要と考えていました。」と語った。
 在宅看取りネットワークは2018年にトライアルが行われ、現在は本格稼働にむけて準備を進めている。西宮市医師会副会長の伊賀俊行氏は「今回のトライアルをもとに、西宮市や多職種の方との話し合いを重ねながら、在宅医療連携ネットワークを広げていきたい」と話す。
 西宮市では「認知症初期集中支援事業」にもバイタルリンクを活用している。福井氏は「社会福祉士、医師、看護師がチームを組み、家族への支援、適切な医療や介護サービス利用の調整などを行います。認知症の疑いのある対象者の自宅を訪問する際に使用するチェック票がバイタルリンクに入っており、安全性の高い多職種間の情報共有が実現しています」と続けた。
 足立氏(兵庫県医師会副会長)は「各郡市区の地域包括ケアの課題解決のツールのひとつとしてバイタルリンクを用い、在宅だけでなく医療機関でも施設でも、患者さんの要望に沿った適切なケアを提供できる体制を整えていきます。行政、医師会、多職種の方々が一体となり、兵庫県の地域包括ケアのさらなる充実を目指します」と語った。

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