ホーム > 導入事例 > Vol. 9 松戸市在宅医療・介護連携支援センター

CASE STUDY Vol. 9

医療、介護、福祉、行政の情報共有を促進し
“地域バーチャル病院”のプラットフォームを担う
「バイタルリンク」

松戸市在宅医療・介護連携支援センター
松戸市医師会

松戸市在宅医療・介護連携支援センターの運営主体である松戸市医師会 在宅ケア委員会は、専門職間の効果的な情報共有を目的に、多職種連携情報共有システム「バイタルリンク」を導入した。同センターの管理責任者を務める川越正平氏に、システム導入の背景と活用に向けた施策、その成果と今後の展望を聞いた。

バイタルリンクの有効活用には 専門職ごとの組織づくりが重要

 松戸市医師会が運営主体である松戸市在宅医療・介護連携支援センターは地域を“一つの病院”としてとらえ、市内の医療・介護・福祉機関や行政が一体となって機能を果たし、老いても病んでも暮らしやすいまちづくりを目指している。

一般社団法人 松戸市医師会 代表理事 副会長
医療法人財団 千葉健愛会 理事長
あおぞら診療所 院長
川越 正平氏

 松戸市医師会副会長、在宅ケア委員会担当理事として同センターの管理責任者をつとめる川越正平氏は「地域ICTシステムの導入において最も重要なのは、多職種が同じ方向を向いて課題に取り組むことです」と語る。
 地域の各専門職が事業所ごとにばらばらのままだと、連携の号令がかかっても実現は困難である。川越氏はまず訪問看護師、ケアマネジャーといったそれぞれの専門職ごとの団体設立を促した。具体的には、松戸市と医師会が働きかけることで、松戸市訪問看護連絡協議会を皮切りにケアマネジャー、リハビリ専門職、メディカルソーシャルワーカーなどの職能団体が設立された。
 「各専門職の組織作りや関係性強化が、地域ICTシステムの有効活用には不可欠でした。松戸市ではICT導入は先送りにしてでも、まずは組織づくりを最優先させました」と川越氏はふり返る。

 松戸市の在宅ケア委員会で検討が行われ、地域ICTシステムとして帝人ファーマが販売する多職種連携情報共有システム「バイタルリンク」の導入が決定、2019年の4月より運用が開始された。現在では医療、介護の専門職、地域包括支援センターなど約600名のメンバーによって活用されている。

タグ機能の活用で重要な情報に対して各専門職の感度を高める

 導入から約1年かけて運用ルールを定め、浸透させた。その中で、情報共有システムは電子カルテとは異なり、みんなで共有すべき重要な情報の「置き場」であるということを意識してもらった。
 たとえばケアマネジャーやヘルパーが特に重要ではないと判断した出来事も、医師にとっては極めて重要ということもある。デイサービスやショートステイの利用時に何気なく計測した体重の情報も時にとても重要な情報となり得る。各専門職が計測した値がバイタルデータ管理機能で共有化されることで、医師が病状悪化のサインに気付くこともできるからだ【図1】。

【図1】バイタルデータ管理機能

バイタルリンクに記入した体重、血圧、体温、脈拍、血糖値、SpO2などの数値を一元管理し、グラフ化して表示することで、経時的な状態変化を確認することができる。グラフ内の逆三角形をクリックすると、連絡帳のメッセージ登録日時、登録者名、職種、連絡帳の件名、本文冒頭が表示されるため、どのような出来事があったかを素早く把握できる。

 難しかったのは各専門職スタッフが「これは重要な情報だ」と自律的に判断できるようになることだったという。そうした判断基準を共有する上で有効なのが連絡帳画面の「タグ機能」だ【図2】。各専門職は自分の投稿に医師がタグをつけることで、何を重視し、どんな情報が重要なのか、また何に注意を払うべきか共通理解が深まりつつある。

【図2】タグ機能

連絡帳画面の「タグ機能」によってメッセージ投稿時もしくは投稿後に、そのメッセージにタグをつけることができる。タグの項目には任意の語句が設定でき、またタグ項目ごとに時系列に並べて確認することができる。現在、同センターでは上記16 種類のさまざまなタグが用意されている。

各専門職の意識を高め現在進行形のACPを実現する

 川越氏が最も活用しているタグ項目の1つに『ACP』(アドバンス・ケア・プランニング)がある。終末期に意思決定を必要としている患者の多くが意思決定能力を喪失しており、一度は決定した方針や意思も、日々移り変っていく。そのため各専門職が聞き取った言葉を記録に残すことは、本人の意向や人生観、それらを代弁するキーパーソンが患者の周りの誰なのかを知る上で有効な手がかりとなる。川越氏は「その患者の意向や人生観が現われた言葉をメッセージとして記録し、『ACP』のタグを付けて管理することで、医師も変化しうる患者の思いや意向をリアルタイムでとらえることが可能となります」と言う。
 その上で「ACPとは医療と介護が力を合わせて日々現在進行形で行う営みです。患者さんの何気ない一言の中にご本人の意向が潜んでいる。各メンバーがそれらに意識を向け、しっかりと記録することが大切です。バイタルリンクはこの記録の場として大きな役割を担っています」と川越氏は語る。

分野を越えた情報共有によって真の「地域共生社会」を目指す

 「帝人ファーマは在宅酸素療法関連機器・サービス、医薬品なども扱っており在宅医療への取り組みも長く、バイタルリンク専任の地域担当者もいるため、安心して使うことができます。また、こちらの意見を真摯に受け止め、的確に対応いただいています。誰もが直感的に使いこなせる優れた操作性、十分な機能、しっかりとしたセキュリティがバイタルリンクの優れた点と感じています」。(川越氏)
 川越氏の診療所ではコロナ禍で、サービス担当者会議や退院時カンファレンスなどをZoomなどのWEB会議システムで実施しているが、最近バイタルリンクにはWEB会議システムとの機能連携が実装された。これによりバイタルリンクの利便性がさらに高まることが期待される。

 「厚生労働省が推進する『地域共生社会』を実現するためには、引きこもりやダブルケアなど数多くの問題を解決する必要があり、医療、介護、福祉、そして行政が分野の垣根を越えて協力することが必要です。多分野のメンバーが情報を有効に共有する手段としてバイタルリンクを活用することで、これまでの枠組みでは解決できなかった問題への取り組みを加速させていきたい」と最後に川越氏は語った。

  • 前の事例へ